「青い鳥」(メーテルリンク)

もう少しお利口さんになります。

「青い鳥」(メーテルリンク/堀口大學訳)新潮文庫

クリスマスイヴ、
貧しい木こりの子
チルチルとミチルの部屋に
醜い年寄りの妖女が訪れた。
「これから私の欲しい青い鳥を
探しに行ってもらうよ」。
二人の子どもは
光・犬・猫・パン・砂糖たちと
不思議な旅に出る…。

ご存じメーテルリンクの青い鳥。
鳥は「幸せ」の象徴。
求めても手に入れることができず、
気がつくと身近に存在している。
よく知られた筋書きです。
しかし、
読むたびに新しい発見がある、
実に深い作品だと感じています。

何度目かの再読をしました。
今回注目したのは
第四幕第九場「幸福の花園」に登場する
2種類の「幸福」たちです。

チルチルたち一行が花園を訪れたとき、
最初にいたのは
「一番太りかえった幸福」たち。
メンバーは「お金持ちである幸福」
「地所持ちである幸福」
「虚栄に満ち足りた幸福」
「かわかないのに飲む幸福」
「ひもじくないのに食べる幸福」…。
この「幸福」たちは
人間の目に見える「幸福」。
チルチルに同行していた
「光」を見ると、
一斉に逃げ出してしまいます。

入れ替わりに現れた「幸福」たち。
ぼくのうちにも「幸福」はいるの?
と尋ねるチルチルに、
「幸福」の一人は答えます。
「あなたのおうちは、
 戸や窓が破れるほど
 『幸福』でいっぱいじゃ
 ありませんか。」

我が家にあってもその通りです。
私をはじめとする家族は
みな健康であり、
障害を担っている長男も元気です。
「健康である幸福」がいる証です。
義母と私たち夫婦と息子2人、
いさかいもなく暮らしています。
「両親を愛する幸福」の
おかげなのでしょう。
不便な片田舎なのですが、
その分環境には恵まれています。
「清い空気の幸福」
「星の光り出すのを見る幸福」
「森の幸福」も確かにいます。
この季節、裏日本は
「青空の幸福」の存在が薄れるものの
「冬の火の幸福」は実感できます。

いや、
これは再読したから感じることです。
普段はほとんど
意識していませんでした。
「幸福」の一人が続けていった言葉
「でも、あなたは見もしなければ、
 聞きもしないんですからね。
 これからはもう少し
 お利口さんになってくださいよ。」

はい、わかりました、
もう少しお利口さんになります。

今日はクリスマスイヴ。
「かわかないのに飲む幸福」を
控え目にし、
110年前に書き表された本作品が
現代に伝えていることを
かみしめながら
夜を迎えたいと思います。

(2018.12.25)

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